漫画家学会-理念

牧野圭一先生はご都合により2009年6月をもって株式会社漫画家学会名誉会長の職を辞されることになりました。私たちは牧野先生が退職された後もその理想を継承し、実現していくために全力を挙げる所存です。
牧野先生の掲げられた理想を忘れぬために、先生が初めて株式会社漫画家学会を立ち上げられたときにお寄せくださった言葉を、牧野先生のご許可をいただいてここに掲載させていただきます。

(ウラハラ藝大・瀬尾泰章撮影)

【マンガ宇宙ビッグ・バン】
 20歳代でマンガの魅力に取り憑かれ、必死にしがみついて走ってきましたが振り返るともう、70歳!半世紀が過ぎようとしています。この間、手塚治虫氏の出現を機に、マンガ宇宙のビッグ・バンが実際に起こったと感じています。それは宇宙がそうであるように、専門家にそう言われても実感を伴わない程、規模の大きなバクハツです。

【宇宙飛行士の緩慢な動き】
 マンガ学会で話を聞いていても、文化庁で事情聴取に応じていても、だれも把握できず、茫洋たる宇宙空間に漂っているかのような感覚です。しかし、私たちは生活者であり、驚いているだけでは何事も前に進みません。(社)日本漫画家協会も、大学のマンガ学部も学会も、さらに京都国際マンガミュージアムも、活発に活動を続けているのですが、それでも皆、宇宙空間での飛行士の動きのように、宇宙規模で観察すれば緩慢であるしかなく、若い漫画家や学生たちの切実な要望に充分に応えているとは申せないのです。

【マンガ宇宙って?何なの??】
 現代のマンガ少女、マンガ青年と、50年前の私の時代と違うのは、その情報量の圧倒的な差であります。ハッブル望遠鏡で覗いても、スバル望遠鏡で観測しても、宇宙の果てが見えるわけでなく、逆に新星バクハツや新たなブラックホールを発見したりして、課題が増えるばかりなのです。『マンガ宇宙って何なの!?』という疑問は、解明されるどころか、どんどん広がって遠ざかってゆきます。

【内観という観察法】
 こんな時は、自分の心に広がる宇宙を「内省」「内観」し、ゆっくり考えることが必要と考えています。どんなに広大で果てしなく、しかも猛烈な速度で拡大し、遠去かり続ける宇宙であっても、所詮、それを理解し感じ取っているのは、私たちの小さな≪脳≫であることにかわりがないのです。この方法であれば、何とか対象にかじりつくことができるかも知れません。

【自分の世界を見詰めていたい!】
 それが壮大な物語であれ、理想の恋人のプロフィールであれ、動物に託した風刺の世界であれ、マンガを目指す少年少女(今や青年・成年・盛年・・・そして高齢者も)がこぞって、マンガ・アニメの手法で自分のイメージを視覚化したいと願っています。
そして、50年前とは比較にならないほどの大勢の人々が「コミックマーケット」「専門学校」「大学」「サークル」で、その成果を発表しているのです。

【妄想の視覚化】
 かっては「はしたない」「はずかしい」と忌避されてきた題材に、若い人々がためらわず挑戦しています。「妄想」は、ひた隠しにして、『私だけはそんなことを考えてはいません』と、知らぬ顔をしていた分野の表現です。コンピューターの発展で見えない世界を【視覚化】する研究が進んでいます。体内の臓器の形状から働き、原始レベルの構造解析など、人間の目に見えないものの視覚化です。しかし、どんなにコンピューターが進んでも「悪夢」や「妄想」を描き出すのは至難の業。マンガ・アニメこそが、その「至難の業」をあっさり実現させているのだと見ることもできるのです。

【精神医療の現場で働くマンガ】
 政府機関が医療現場でサポートする【介護ロボット】を本格的に開発、実用化しようとしています。手塚氏の「アトム」の世界は、もう実現しつつあります。次は【ブラックジャック】の精神世界にも「現実」が近付いてくるでしょう。私は「マンガの根源的な機能」そのものが精神医療に役立つと考えています。

【妄想の企業化】
 ・・・などと言えば、ナニを血迷って!!と思われるかもしれません。しかし、日本のマンガ・アニメは、優れた読者・市民の読解力と、【共感するエネルギー】によって支えられているのだと受け止めています。他国では「社会通念」「宗教的倫理」の縛りによってがんじがらめにならざるを得ない【聖域】に、何事もないような顔で入り込み、高いレベルでの理解を得、その理解によってさらに高いレベルの「妄想表現」を可能にしています。日本のマンガ表現の最大の特徴であります。作家だけの能力で実現した《マンガ宇宙》ではありません。

【株式会社:漫画家学会】
 この特徴・利点を深く認識し、その認識に立ってマンガの可能性を追求。「夢」「妄想」の分野を現実的に掴み取ってゆく!と、申し合わせたのが【株式会社:漫画家学会】です。○ マンガのネット配信の新しいシステムは無論のこと、○ 原点である紙芝居の家元制度。○ 立体マンガ=フィギュア ○ マンガモニュメント、○音楽・パフォーマンスとマンガ。○ 精神医療とマンガ表現、○ マンガの発想法と教育・・・・。キリがありません・・・私の妄想!?は・・・(^@^)v。

【マンガ宇宙の星々を繋いで字通な星座を描く】
 考えてみると、「星座」も人々の頭の中の「妄想」を映しだした世界なのではないでしょうか?単純な点と線から、複雑な物語の主人公をイメージできる「能力」「脳力」は、日本のマンガ世界に繋がっています。天空世界の「点と線」を、地上にまで繋げ、
果ては利益にまで繋げようという≪妄想≫の行方に、どうかご注目下さい。

株式会社漫画家学会 名誉会長 牧野圭一
2009・9・火・6.10p.m.船橋自宅・曇り・秋風